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がんサバイバー体験談コラム(第6回)を掲載しました。

2021年03月01日

第6回『がんサバイバーによる体験談コラム』

 

 

[私のがんは痛かった]

 

認定講師 河野 美和

 

私は福岡出身で現在神奈川県に住む、乳がんサバイバーです。
「家族や親戚にがんで亡くなった人はいない。うちはがん家系じゃないけんね」というのが母の口癖でした。
私も無意識に、私はがんにならない。大丈夫だ。と何の根拠もなく、そう思っていました。これが間違いの始まりでした。

福岡から、神奈川へやってきて20年。二人の子供も中学受験と幼稚園の卒園を控えた秋、ふと気が付くと、胸が痛みます。走ると痛い程度でした。
「がんは痛くない」と何かで読んだのか、そんな大変な病気ではないと思っていました。でも、クリニックを受診したら…「乳がんです。すぐ大きな病院へ」。頭が真っ白になりました。人間ドック受けていたんです。でもそういえばその年は、長女のお受験でそれどころではなく、落ち着いたら受けに行こうと思っていました。
既に3センチを超えていたわたしのがんは「トリプルネガティブ」というタイプでした。すごい名前ですよね。
すぐに抗がん剤治療が始まり、あっという間に髪が抜けました。そして、眉毛や鼻毛まで。私の人生は終わった。と思いました。そして抗がん剤も効かず、1か月で5センチになったところで、緊急手術。左胸全摘出でした。抗がん剤の副作用で、つわりのような吐き気に襲われながら、ぼんやりしていました。とりあえず今は死ねない。卒業式まで、入学式まで。と毎日過ごすのがやっとでした。「ママ、このおっぱいはいつ生えてくるの?」5歳の娘に聞かれて、何も言えませんでした。もう元の生活には戻れない。仕事なんてとんでもない。誰にも会いたくない。そう思っていました。

それから3年、抗がん剤が終わると髪が生えてきました。もう一度生まれたような気分でした。お陰様でなんとか元気になりました。あの時、仕事を辞めなくてもよかったかもしれない…。と思うことがあります。
でも、私には正確な知識と判断力がありませんでした。
今なら、あの時の自分に言えます。
「きちんと治療を受けたら、元気になるから。頑張れ!」
そして、もう少し早く気が付いていれば、こんなことになりませんでした。がん検診をちゃんと受けること。受けたことに満足しないで、結果を大事にして、変化に注意すること。
これができていれば、もっと明るい人生だったはず。
私のような人が一人でも減りますように…と願うばかりです。

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